2023.11. 秋不在の読書記録

 

積読本をいくつか読み終えたので、まとめて記録しておく。

 

動物のお医者さん 第1巻 (白泉社文庫) 動物のお医者さん 第2巻 (白泉社文庫)

獣医をめざす大学生ハムテルと、シベリアンハスキーのチョビ、そして一癖ある愉快な仲間たちが織り成すコメディ。

子供の頃、歯医者さんの待合室で読んだことはあるのだが、内容はほとんど覚えていないので、新鮮な気持ちで読んでいる。大型犬が飼いたくなる。

 

出世と恋愛 近代文学で読む男と女 (講談社現代新書)

近代の青春小説・恋愛小説に投影された青年像や恋愛観をよみとく。夏目漱石三四郎』、武者小路実篤『友情』、尾崎紅葉金色夜叉』、菊池寛真珠夫人』等の12作品がその題材である。

まず及び腰になるほど帯がださい。ところどころに入る、古い少女小説のようなツッコミもしんどい*1。しかし内容は面白かった。学生の頃に読んで非常にぼんやりとした印象しかつかめなかった『三四郎』も、ようやく話が吞み込めた気がするし、昼ドラのイメージ*2しかなかった『真珠夫人』も、主人公・瑠璃子が魅力的で、読んでみたくなった。

 

京都の平熱 哲学者の都市案内 (講談社学術文庫)

この名前をみると大学受験を思い出さずにはおれない。現代文・評論の問題でおなじみの鷲田氏による都市案内。

京都市を一周する市バス206番の路線図に沿って、京都駅を始点に七条通りを進み、東は東大路通、北は北大路通、西は千本通から大宮通を進み、京都駅に戻ってくる。目についたものを挙げながら、そして、京都で生まれ育った著者の記憶や日常に触れながら、京都という町の独特な性質*3に言及する。

とくに終盤の文章は、いかにも現代文の問題で扱われそうだと思いながら読んだ。

都市が都市らしくある条件は、そこに選択肢がいっぱいあることだ。異なる価値観が見えるかたちであると言ってもいいし、〈反世界〉が組み込まれていると言ってもいい。この本の初めのところでも述べたことだけれど、古い町にあっていまの郊外のニュータウンにないものが三つある。一つは大木、一つは宗教施設、一つは場末だ。この三つには共通するものがある。世界が口を空けている場だということだ。(中略)そして現代、消費の記号で埋めつくされてどこにも隙間のない都市、隙間さえも記号としてただちに消費されてしまうそんな都市において、古木と寺社と場末に代わるのが、ひょっとしたらアートなのではないかとおもう。(260‐263頁)

本書の原本の刊行は2007年頃らしいから、2023年現在となっては、随分様変わりしている場所もある。とくに京都駅周辺は、当時は駅ばかりが近代的で、その周辺はあまりに侘しかった。その後、イオンやらヨドバシやら水族館やらができて、地下街もきれいになって、夜遅くまで観光客が蠢いている。

 

華胥の幽夢 (かしょのゆめ) 十二国記 7 (新潮文庫)

短編集。いわずもがな面白いが、各話に1人、理屈っぽいというか、説明役っぽい役割をさせる人がいるなあ(話の着地のために喋らせている)という印象。

「乗月」や「書簡」はアニメでも観たので懐かしい。

 

上司に信頼される話し方 部下を傷つけない話し方

  • 比嘉華奈江『上司に信頼される話し方 部下を傷つけない話し方』(ダイヤモンド社

自分のコミュニケーション能力に失望しているので、ときどきこういう本に縋ってしまう。

 

*1:「このオタンコナスが」とか「このウスラトンカチが」とか……。

*2:たわしコロッケね。

*3:それはよく言われる「いけず」とかいうことではなく、むしろその包容力について。